いつものように、イミテーションとの戦いを終えて ティーダと行動を共にしていた俺は、敵のいなくなったその場で武器の手入れをしていた。 離れて戦っていたティーダも戦闘を終えたらしく、ゆっくりと此方に向かってきた。 「フ、フリオ・・・」 元気が取り得とも言えるほど明るい彼、ティーダが気の抜けた声で俺の名を呼んだ。 息が荒く、顔は高潮し、どう見ても彼の体に異変が起こっているのは明らかで 俺は武器手入れを放って、ティーダの元へと駆けた。 先ほど、戦闘開始時もイミテーションを何体倒せるか競争しようぜ!と元気よく話していたのに。 フラタニティを突き刺しながら、ようやく歩いていた彼は、俺が傍に行った途端その場に崩れ落ちた。 ※※※ ティーダは酷い熱に侵されていた。 俺が支え、安全な場所に移動する際も彼は意識朦朧だったが 「ご、めん・・・な」 と、途切れ途切れの言葉で謝罪を口にした。 そんな事気にするなと言えば、ん、と俺の言葉に対する返事が返された。 「此処なら、とりあえずは安心だな」 月の渓谷にある1つの岩に、小さな横穴を発見した俺は、そこへティーダを横にした。 イミテーションシャントットのバイオにやられたらしく、体は毒に侵され体力を削っていた。 風邪よりも性質が悪い・・・、今は毒消しを持ち合わせてはいなくて、あるのはポーションのみ。 でも、無いよりはマシだ。 「ティーダ・・・」 「ん・・っ?」 呼びかければ、まだ意識があった。 こんな形で彼にするとは思っていなかったが、致し方ない。 本当なら、お互いに想い合ってからしたいけど、そうは言っていられない状況だ 俺はポーションの瓶の蓋を開け、一口それを含む。 呼吸がし辛いのか、うっすらと開いたティーダの唇に俺の唇を合わせた。 「ん!ふっ・・!?」 前置きせず、俺はティーダにポーションを口移しで飲ませた。 彼も突然で驚いたのか、ぴくりと体を震わせたが、毒のせいで思うように体が動かないらしく抵抗は無かった。 俺の口の中から独特の味の液体が彼の口の中へと移動させ、彼が飲み込むのを確認するとまた一口含み、口移しで飲ませた。 全部飲み終えると体力が回復した分だけ、少し楽になったようだった。 「すまん・・・ティーダ」 「ど、して・・・謝るんスか?」 「緊急事態とはいえ・・・キスしてしまって」 俺はティーダに対しての想いを伝えずにいた。 それに、男性からのキスなんて・・・普通の男ならば、気持ち悪いと思うに決まっている。 でも、俺はティーダに対するこの気持ちを止められなかったから 心の中で、こっそりと想う事に決めた。 「フリオ・・・俺は・・」 「毒消し探してくるな!すぐに見つけてくる」 ティーダの紡いだ言葉の続きを聞きたくなくて、わざと言葉を遮るように言い、その場を離れた。 否定の言葉ばかりが頭を過ぎる上、まだ覚悟の出来ない俺には怖くて・・・ 恋に臆病な俺は、このときどうしていいのか分からなかったんだ。 「・・・意気地無し。」 4.口移し お互いがお互いを想い合っている事に気づくのはいつ・・・? 2009.09.26 |