※現代パロです。





週に二度、”家庭教師”として三つ年下の彼の家へと足を運ぶ。

高校生であるスコールは、何故か一人暮らしをしている。

バッツは疑問を抱きつつも、なんとなく聞けずにいた。

だが二人は恋仲なので、バッツにとってはむしろ親と暮らしていない事は好都合である。



いかにも高そうな高層マンション。

未だにマンションのインターフォンを押すのに抵抗がある。

部屋番号を入力し呼び出しボタンを押すと、控えめな声で返事が返ってきた。



「・・・はい」

「あ、俺俺!鍵開けてくれよ」



スピーカーの向こうから、静かな溜息が聞こえた気がするが、バッツは気にしない。

通話が切れる音がしたと同時に、ロックされていた扉が開いた。

中に入り、エレベーターに乗りスコールの部屋の階へと向かった。


扉の前でまたインターフォンを押し、扉が開くのを待つ。

鍵の開く音がして、すぐに扉が開かれた。スコールが顔を出す。



「お邪魔しまーす」



ちょっと乱暴に靴を脱ぎ、スタスタと勉強部屋へと向かう。

とても綺麗に整頓されたスコールの部屋。

ズボラな性格のバッツはいつも関心してしまう。



「いっつも綺麗にしてるよな」

「そんなことない、これが普通だ」



バッツは、これが普通なら当分自分の部屋には呼べないなと思った。



「さ、始めよっか」



カバンから筆記用具と高校用のテキストを出し、パラパラとページを捲った。

スコールは何も言わず、自分の机の椅子に座った。






勉強を始めて小一時間ほど経ったので、10分間の休憩を挟むことにした。

ずっと立ちっぱなしだったバッツは、スコールのベッドに腰掛けた。



「飲み物、取って来る」



スコールは一言そう言い、部屋を出て行った。

ふぅ、と短い溜息を吐き、ここ最近大学が忙しくて休む暇が無かったなと思いながら、倒れるようにベッドに横になる。

横になった途端一気に眠気に襲われて、瞼が重くて仕方が無い。

まずいとは思いつつ、目を開けられずにいた。



「・・・バッツ?」



遠くからスコールの声が聞こえる。

でもバッツにとって、スコールの声は眠りを促進する材料でしかなくて

そのまま深い眠りへと引きずり込まれていった。










目が覚めると部屋は暗くなり、体には一枚毛布が掛けられていた。

ばっ、と起き上がり時計を見るともう9時をまわっていた。



「・・・スコール?」



愛しい人の名前を呼ぶ。返事がない。

何故かは分からないが、不安になって辺りを見回す。

ドキドキして、胸が痛くて、怖くなってベッドから出る。

部屋を出て居間へと向かうと、ソファーに座って本を読んでいるスコールがいた。




「スコールっ!!」

「わっ・・・どうした?バッツ」



急に心細くなったバッツは、スコールに勢いよく抱きついた。

それはいつもの彼の体温と匂い。少しずつ不安が消えていく。

ぎゅっ、と抱きしめると、スコールもバッツの体を抱きしめかえしてきた。



「バッツ・・・?」



心配そうな声で訊ねられ、バッツはそのままの体勢で



「もっと、もっとぎゅってして?」



バッツ自身、信じられないほど恥ずかしい台詞を言ってしまったと思う。

スコールはあまり愛情表現を表に出さないタイプだ。

むしろこの位が丁度いいのかもしれない、と思いさっきより強くスコールを抱きしめる。



「怖い夢でも見たか?」



そう言ってスコールもバッツを強く抱きしめ返した。

胸から伝わる鼓動が早くて、つられてドキドキしてしまう。

ゆっくりと体を身じろぎ、バッツはスコールの腕を解くように離れようとした。



「急に抱きついてごめんな、スコール」



スコールは離れようとするバッツの腕を掴み、再び自分の胸へと引き戻す。



「あと少し、このままがいい」

「・・・うん。」



それから暫く時間が経つのを忘れて、バッツはスコールの腕の中にいた。












「うわ!もうこんな時間だ!」


時間も気にせずに二人で過ごしていたせいか、もう夜中とよばれる時間が迫っていた。

スコールとの勉強が終わった後、また大学に戻ってやる事があったのも、すっかり忘れていた。

それももう、取り返しがつかないほど時間が経ってしまったので行けはしないが。



「泊まっていくか?」

「・・・えっ?」



思わず大きな声で聞き返してしまったバッツは、動揺を隠しきれない。

突然、そんな事言われても・・・心の準備が必要なワケで、色々と。



「明日は、大学休みなんだろ?」

「うん、まぁ・・・」



だからこそ、今日中に大学で残してきた課題を片付けようと思っていたのだ。

それも出来なくなってしまったんだけれども・・・どうすべきか。

返事を何て返していいか悩んでいたバッツは、スコールの視線を正面から受け止められない。

本当は、どうしたいのか決まっているのに。



「バッツ、あんたを帰したくない。」

「・・っ/////////」



奥手のスコールが突然爆弾発言。

バッツは自分の顔が真っ赤なのが分かるくらい顔が熱くなってしまった。

意を決して、ちらっとスコールの顔を見やると、彼も顔を真っ赤にしていた。


その夜、バッツはスコールの家へ初めて泊まったのでした。











朝、バッツが目が覚ますと隣には自分に腕枕をしたスコールが眠っていた。

もう片方の手でバッツを抱きしめながら。


昨夜の事を一気に思い出す、雰囲気に流されてしてしまった。

何度かスコールとは体を重ねたが、こんなに恥ずかく感じられたのは初めて。


大学は休みだけど、昨日やり残した課題を片付けなければならない。

スコールの温もりを手放すのは名残惜しいが、そっとスコールが起きないようにベッドから抜け出した。



「・・・早いな」

「あ、スコール・・・おはよ。起こしちゃった?」

「いや、いつもこの時間に起きるから自然と目が覚めた」



着替えてる途中にスコールが声をかけてきたものだから、バッツは少し驚いた。

てきぱきと身支度を済ませるバッツに、スコールは眉根を寄せた。



「今日は休みじゃないのか?」

「うん、昨日やり残した課題があるから・・・行かないと」

「そうか・・・。」



バッツは気づいたかわからないが、スコールは少し寂しそうな顔をした。



「課題終わったら、また・・・きてもいい?」



思いもしない言葉を聞き、スコールはバッツと視線を合わせた。

でもバッツは恥ずかしいのか、すぐに目線を反らしてしまい、そのまま部屋を出て行こうとした。



「待て、バッツ・・。」

「ん、何?」

「・・・これ。」



立ち止まるバッツの腕を掴み、手のひらに握らせる。

それは、この部屋の。スコールの家の鍵だ。



「いつでも、来てくれていいから。」

「あ・・うん。じゃあ、俺行くな。」



そのまま駆け足で玄関を出た。

前から思ってたけど、いざ鍵を渡されるとどうしていいのか分からない。

羞恥で部屋を出てきてしまったけど、スコールはどう思ったのだろう・・・。

考えても仕方がない、今は大学の課題を早く終わらせて早くこの部屋へ戻ることを考えよう。


初めて恋人の部屋に合鍵で入るむず痒さを想像しながら、バッツは大学へと向かった。









「た・・・ただいま////」


「おかえり、バッツ。」







4.もっと。




2009.10.27


ありきたりな上に無駄に長い・・・。

規制シーンは長くなったのでカットしちゃいました。

砂吐くくらい甘いのが書きたかったんです。